雨上がりの夜が好き

本の感想多めです

4/5(生活について)

 日々が無為に過ぎていく。中途半端に投下した努力は中途半端な結果にしか結び付かず、しかしそれ以上の努力をする気にもなれない。自分が一体どこを目指したいのか、何が欲しいのかについて道に迷っている。親しい友達と会ったり話したりする機会が一気に減って、それをラジオや小説で埋めようとして、うまく行ったりいかなかったりである。

 

 堀江敏幸さんの『なずな』を読んでいる。まだ乳幼児の弟の子供を預かり保育する過程で人との繋がりができ、記者として活動するうちに街の歴史や開発計画に詳しくなっていくという筋書きだと思う。乳幼児が家にいると生活の全体を改変せざるを得なくなり、同時に物を見る視点も変わるということが、堀江さんの丁寧な筆致で見事に描かれている。関係ないようである話をすると、堀江さんはある特定の技術を持った人の身体様式や語彙の体系に対する観察眼が非常に鋭いと思う。それが『なずな』でも存分に発揮されている。

www.shueisha.co.jp

 

 『マンスーン・ヤスミノの音声放送』を聞いている。1年目はサブカルの話ばっかりしてた気がするのだが、今聴いている50-65回のあたりは生活の話の割合がかなり高くなっている。2人の身体や家の話をずっと聴いている。面白いけど、心の穴を埋めるには少し物足りない。 

「音声放送」に関する記事 | オモコロ

 

 今の私には人間関係が明らかに足りていないのだが、もう一つ足りないものがあるとすれば生活だと思う。生活をして、心だけでなく自分の身体や衣住を管理・ケアすることで獲得される感覚が自分にはほとんど身についていないような気がする。これは、『なずな』を読んで感じたことであり、同時にヤスミノが散々怠惰自虐をしながらも毎回動画には綺麗な服を着て出ているし、(当たり前だが)家のことをきちんと気にかけていることからも感じたことである。以上!