映画『ICE CREAM FEVER』を観た。宮崎駿の『君たちはどう生きるか』が同時期から公開されたことを一緒に行く人にチケットを取って貰ってから知って、少し申し訳ない気持ちになった。私にはアイスクリーム熱を観る充分な理由があったけど、一緒に行く人たちにはそこまで強い理由はなかっただろうから。また、きっと私は宮崎駿を劇場に観に行かないだろう。私にとって映画館は月に何度も行く場所ではないからだ。そうなると、あと1年はあの映画を私は観ないだろうし、感想を他人と共有できなくなってしまう。
でも、観てよかった。この3年ずっと読んできた川上未映子さんの初の映像化ということで、公開されたらすぐ観に行くことを決めていた。そして、あえて原作を読まずに観にいくことも決めていた。何らかの主題があるようで、けれど主題に全てが収束するわけではなく、初見では理解しきれないところ、その主題との距離の取り方、登場する女性の描き方は紛れもなく川上未映子作品だった。
原作をほぼそのまま使っているのか、短編のいくつかを組み合わせているのか、はたまた原作はきっかけに過ぎずほとんど違う話なのかを今の私は知り得ないが、そのどれであっても全く文句がない。完全に川上未映子だったし、とてもいい時間だった。
主演は吉岡里帆さん。その他特に印象的だったのは水曜日のカンパネラの詩羽さんと、モデルのモトーラ世理奈さん。この二人の存在感はすごい。
話としては、一つのマンションの部屋とアイスクリーム屋さんを舞台として起きる群像劇。彼女たちが愛したり憎んだりしながら人生の選択をして自分として生きていくための話。色のモチーフが用いられたちょっとした仕掛けがあったり、叙述トリックがあって面白かった。途中でエンディングに入るか？というタイミングが2回くらいあったのだけど、最後まで観るときちんとわかるようになっているし、逆に途中のところで終わっていたらスッキリした終わりにはなっていなかった。また、渋谷が舞台になっていて、ずっと渋谷ばっかり映るので、渋谷で生活している人は観ていて楽しいと思う。
